アコースティックギターの強過ぎるピッキング音への3つの対処法

アルペジオやリードなど、アコースティックギターは独特の温かみのあるムードを楽曲にもたらしますが、そのアタック音は時としてミックスの中で飛び抜けてきてしまいます。これらは瞬間的な音量変化に起因するものなのでフェーダーオートメーションやコンプレッサーでの対処が思い浮かびますが、ここではそれ以外の方法でより効果的にアコースティックギターのピークを均す方法を考えます。
Ozone 9 Vintage Tapeを使う方法
アナログ時代のテープ録音はデジタルの透明で写実的な録音と異なり常に劣化と隣合わせの状態にあります。テープレコーダーの設定によっては速すぎるトランジェントを正確に捉えられないことがありますが、ここではこのように特性が劣化する性質を逆に利用します。
まずはテープレコーダーの回転数を落とします。回転数を落とすと周波数特性や過渡特性が劣化するためアコースティックギターの特徴的なアタックを再現するのが難しくなり、程よくアタックが丸みを帯びます。
続いてInput DriveとBias調整です。Input Driveを上げると音が飽和(サチュレーション)していき、またバイアス電圧を上げることでもダイナミックレンジが狭まります。こうすることでアタックの鋭さを更に抑えることが出来ます。
この手法の良いところは全体の音色に音楽的な色付けが見られることです。またVintage Tapeはテープにつきものであるワウ、フラッターやヒスノイズを付与しないため、音色とトランジェントのみに集中することが出来ます。
Neutron 3 Transient Shaperを使う方法
トランジェントが鋭いことが問題なのであればTransient Shaperを使おうという非常にシンプルな発想で行うのがこの方法です。ピッキングの部分のみに作用するのでコンプレッサーほど演奏全体の音質に影響をもたらすことはありません。
アタックがミックスで浮いてしまう場合特に目立つ成分は高域に集中していますが、Neutron 3のTransient Shaperは帯域を切り分けることが出来るため問題箇所のみを切り分けて対処することが出来ます。
Attackを下げるだけで耳障りなアタック音は大人しくなります。その後いくつかのモードを試してリリースの感触が程よくなるモードを選べばそれだけでプロセスは完了です。
RX 8 Guitar De-noiseを使う方法
ノイズリペアの定番ツールであるRX 8ですが、ミックスにおいても効果を発揮するシチュエーションがあります。RX 8で新たに追加されたGuitar De-noiseモジュールではアコースティックギターの強過ぎるアタックを狙って抑えこむというまさにこの問題を解決するためだけのモードが存在します。
感度とかかり方を調整するだけで済むので他のツールと比較するとコントロールが直感的なだけでなく、before/afterの差分のみを聴くことも出来るので本当に問題部分のみにアプローチ出来ているかを確実に分かるのも嬉しいポイントです。
結論
このように、同じアコースティックギターの問題に対して3つのアプローチを紹介しました。音色変化をもたらしたいのか、パラメータを細かくマニュアル制御したいのか、簡単かつ確実に問題を取り除きたいのかを考えながら、シチュエーションに適したオプションを選んで下さい。