Neutron 3~4で追加された機能【ミックスマスタリング学園】
iZotopeのソフトウェアで初めてAI機能が搭載されたのは2015年に登場したNeutronでした。AIがトラックの音作りを提案してくれるおかげでそれを叩き台にして音作りを考えられるようになり、ある人は時短につなげ、またある人はアイデアを膨らませる手段としてNeutronを使ってこられたのではないかと思います。
現在Neutronのバージョンは5ですが、気がついたらNeutron 2のまま止まってしまっている、なんて方が結構いらっしゃるかもしれませんが、今Neutronの情報を調べても基本的には最新の5の情報ばかりが見つかると思いますので、ここではNeutron 3と4でそれぞれどのような新機能が追加されたか、敢えて最新バージョンの5の話に触れずにご紹介していきます。
Neutron 3で入った新機能は大きいところだと下記の3点です。
- Mix Assistant
- Sculptorモジュール
- UIの刷新
先述の通りNeutronはトラックの音作りを提案してくれるAIとともにデビューしましたが、Neutron 3ではトラック間の音量バランスをも提案してくれるようになりました。
ミックスを進める上で意外と手間と時間のかかる作業が「ある程度音量バランスのとれた状態まで持っていく」という工程、言い換えるとラフミックスを作ることですが、Neutron 3のMix Assistantはここを肩代わりしてくれます。
勿論これだけでミックスが全て完成するわけではありませんが、アシスタントが提示した音量バランスに対して自分のアイデアを反映させていくスタイルは、ゼロの状態から全てのトラックの音量バランスを一つ一つ整えていくよりも手軽かもしれません。
SculptorモジュールはNeutron 3で新たに登場しました。Sculptorは楽器の種類に応じて最適なトーンバランスになるよう調整してくれる賢いマルチバンドプロセッサーです。そのまま使って音を作り変えてもいいですし、とりあえずSculptorをかけてみることでトラックを現状からどのように変化させていくかのあたり付けに使うこともできます。
iZotopeのツールのUIが今の形になったのはNeutron 3からです。今でこそ見慣れた方も多いかもしれませんが、Neutron 2まではこんな見た目でした。懐かしいですね。
比較のためにNeutron 3のEQのチュートリアルも載せておきます。見た目が大きく変わったことで使い勝手も向上しました。
Neutron 4では下記の新機能や変更が加えられました。
AssistantのワークフローやUIの刷新
Unmaskモジュールの追加
ExciterモジュールへのTrashモードの追加
CompressorモジュールへのPunchモードの追加
Neutron 3までのアシスタントでは最初に楽器や目指すトーンについて手動入力しないといけない煩雑さがありましたが、Neutron 4からはアシスタントボタンをクリックしてトラックを再生すれば、勝手に楽器を推定して音作りをしてくれるようになりました。
また、音作りが決まった後もすぐにモジュールチェーンの画面に遷移することなく簡易的に音を作り込める画面に遷移するため、1つ1つのモジュールを自分の意思で使いこなすのがまだ難しい方でも安心してアシスタントを使うことができるようになりました。
NeutronのEQにはトラック間で生じているマスキングをグラフィカルに表示するメーターが搭載されていますが、Neutron 4ではこのマスキングを解消することに特化したUnmaskモジュールが追加されました。これにより、たとえばボーカルが歌っている間だけリズムギターの中域を抑え込む、ドラムとベースが演奏している間だけ背景のストリングスのローを抑え込むといったマスキングへの対処が動的かつ簡単に行えるようになりました。
更にExciterモジュールには更に過激な歪みを加えることができるTrashモードが追加されました。従来のExciterでは生易しい、もっとはっきりわかりやすく音を歪ませてしまいたい、という時にとても便利です。今でこそTrash Liteを使えば無料で柔軟に歪みを作り込めるようになりましたが、Neutron 4のExciterのTrashモードは比較的使いやすい歪みアルゴリズムが4つ厳選されているため、目当ての歪みの質感にたどり着くのがTrash自体よりも簡単かもしれません。
CompressorモジュールにPunchモードが追加されたことで、ドラムやパーカッションの音作りの可能性が飛躍的に広がりました。トランジェントを作り込む上で従来のCompressorのコントロール(アタック/リリースタイム、ニー、レシオetc)は直感的とは言えない部分もありましたが、PunchモードではわかりやすくAmount、Attack、Sustainという3つのパラメータだけでパンチの強さをコントロールすることができます。
余談ですが、Apple SiliconにNative対応したのもNeutron 4からでした。
これらがNeutron 3と4で追加、改良された主な機能です。Neutronのアップデートを検討されている方は、Neutron 5の新機能と併せてこれらの機能をご確認いただければ、Neutronを最新版にするメリットがクリアになるのではないかと思います。