チュートリアル

プリセットを有効活用する方法 後編【ミックスマスタリング学園#15】

2023.07.31

ゲインステージ

ゲインステージはコンプレッサーやディストーションといった歪みエフェクトに特に大きく影響します。なぜなら、歪みエフェクトは入力信号の大きさによって音色が大きく変わるからです。

プリセットが想定するレベルと手元のシグナルのレベルが合わなければ当然歪み過ぎ/歪まなさ過ぎの状態になります。だからこそ、InputやThresholdを合わせて適切な量の歪みを足すのが重要なのです。

ここでThresholdだけではなくInputを調節する理由は、アナログ回路を模したエフェクトやディストーション、サチュレーションの場合入力された信号のレベルに応じて回路全体の挙動が変わってしまうからです。

  • Input = 0dB, Output = 0dB
  • Input = +12dB, Output = -12dB

では音が異なります。エフェクトが最も良い効果をもたらす設定になるように、InputやThresholdを合わせるよう心がけて下さい。

特に歪みは音色が心地よいか否かが重要なエフェクトですがこの心地よさは非常に主観的と言えるので、もし正解があるとすればそれは個人的なものになるでしょう。

リバーブ

響きの違いはリバーブの使い方に影響します。例えば極めてドライなソースを響かせる目的のリバーブプリセットを既に十分な響きを含んだ波形にかければたちまち響き過多になり印象のボヤけたよくわからない音になっていまいます。

なので、まずは手元の波形にどのくらいの響きが入っているのかを確かめてみて下さい。特にピアノやオーケストラのサンプルライブラリを使っていると多くの場合十分な部屋鳴りがサンプルの中に含まれています。

あとはEQやコンプレッションと同様にプリセットのパラメータからそれを作った人の意図を読み取って下さい。

  • 部屋の広さ
  • 形状
  • 材質

等が想像できます。また、部屋鳴りと残響のバランスやEQの入り方、モジュレーションのかかり方等からどういった素材に対してどのような文脈でかけるつもりで作ったプリセットなのかも読み取れるはずです。

プリセットから作者の意図が読み取れるようになれば自分で好きな用のリバーブがかけられるようになっていると思います。

アシスタントの意見を聞いてみる

ここまで読んで途方に暮れてしまった方もいると思いますが、そんな時こそアシスタント機能を試してみて下さい。アシスタントはユーザーの手元にある波形のためにプリセットをその場でテーラーメイドしてくれる機能です。これまで説明してきたすべての要素を加味してプリセットを提案してくれます。
EQやコンプレッサーであればNeutronが、ボーカルに特化した処理であればNectarが役に立ちます。Neutronであればマザーシッププラグインを起動してアシスタントボタンをクリックしトラックを数秒間再生すると、アシスタントがそのトラックのギターサウンドに適したトーンカーブを割り出し、そこに近づける処理を行います。

Nectarの場合もVocal Assitantボタンをクリックし

ASSISTを選んだら

処理の方向性と強さを選んでトラックを再生するだけでカスタムメイドのプリセットが生成されます。

NeutronやNectarのアシスタントの使い方は下記の動画をご参照下さい。

 

 

おまけ: プリセットを作る側の苦悩

プリセットを作る側の心理としてなるべく汎用性が高く、なるべく多くの問題を解決したいという思いがあります。しかし、これらはトレードオフの関係にあります。

特定の素材の問題にアプローチするプリセットであればあるほど、その他の素材に対して効果を発揮しないものになりがちですし、どんな素材にでも使えるプリセットを作るとしたらそれはほとんど何の問題も解決しない当たり障りのないものになります。

プリセットの作り手は常にその2つの間でちょうど良いバランスのポイントを見つけてプリセット化しようとしており、そこには何らかのメッセージが必ず含まれています。

まとめ

プリセットがそのまま使えるケースは稀ですが、だからといってプリセットが役立たずというわけではありません。プリセットはアイデアの宝庫として、また教材として非常に多くの可能性を秘めており、それらを理解することで自分の手元の素材に合った使い方が出来るようになるでしょう。また、プリセット無しでエフェクトを使いこなす近道にもなるかもしれません。