チュートリアル

FXEQのリバーブ、ディレイとAurora、Cascadiaの違い【ミックスマスタリング学園】

2025.12.01

iZotopeのCatalystシリーズにはAuroraというリバーブとCascadiaというディレイプラグインがある一方で、FXEQにもリバーブとディレイが入っていて「これは結局どっちを買うのがオトクなの?」と疑問を持たれている方もいらっしゃるかもしれません。使い方の違いを理解することで、その疑問を解消してみたいと思います。

まずはFXEQのリバーブから。一般的にリバーブはソース全体に対してかけた後に不必要な部分を削り取っていくような使い方をしますが、FXEQではまるでEQをかけるように元の信号の特定の帯域だけにリバーブを足していくような使い方をします。


青い影になっている部分にだけリバーブがかかるようなイメージ

例えば中域にだけリバーブを足していくことと、Auroraに対してハイパス、ローパスフィルターをかけることの間には大差がないかもしれません。しかし、FXEQであれば「中域に強めにかけて、低域も特定の帯域だけ濃いめにかけて、高域もそこそこうっすらかけておく」といった微妙なデザインが容易にできます。


ノードは最大6つ追加可能

もちろん、AuroraもAuxでセンドでかけてSolo Reverbをオンにした状態で例えばNeutronのEQを使って周波数特性を変化させれば似たようなことは実現できるかもしれませんが、そのための手間、手数を考えるとFXEQの方が手軽で直感的と言えるでしょう。

ではAuroraの方が有利になるのはどのような場面でしょうか。両者はプリディレイやリバーブタイムが調整できる点では共通していますが、まずリバーブの音色がAuroraの方が豊富に用意されています。FXEQではHall、Chamber、Plateの3種のみですがAuroraではこれらに加えてRoom、Ambience、Cathedralという異なるテクスチャーを選ぶことができます。

他にもAuroraではリバーブ成分のステレオ幅を広げたり狭めたりすることができます。更に、Auroraのユニークな機能としてUnmaskがあります。これは特にリバーブをしっかり深めにかけたい時に便利な機能で「ドライとリバーブ成分が干渉してマスキングしあっている時に、干渉が起きている帯域のリバーブ成分を、その瞬間だけカットするという動的な処理です。

要するに「音が濁りそうになったら勝手にリバーブを抑えてくれる機能」です。これがあることで、Auroraはリバーブを深く、濁らせずにかけることができます。


赤枠で囲った部分の成分がリバーブからカットされている

FXEQを濁らせずにかけようと思ったら、ドライ成分と干渉しない帯域を自分の耳で判断しながら探すことになります。これはFXEQが不便というよりAuroraが明確に便利だと言える部分です。

ではディレイについてはどうでしょうか。FXEQではディレイもリバーブと同じようにかけたい帯域にだけEQをかけるような気持ちで足していくことができます。


FXEQではリバーブとディレイを1つのプラグインで両方使うことも可能

Cascadia自体にはトーンを調整する機能はローパス、ハイパスフィルターしか入っていないため、微調整したい場合はAuxにセンドしてEQする一手間が必要です。

一方で、Cascadiaであればディレイのピッチのゆらぎを細かく調整できたり、ピンポンディレイにした時のステレオ幅を自由に変更することができます。

更に、CascadiaにはAurora同様Unmask機能があるため、ディレイがドライ成分を邪魔している瞬間だけ抑え込むことができます。つまり、深いけど濁らないディレイを簡単にデザインできます。


赤で囲んだ成分がディレイからカットされている

このように、原音に対してリバーブやディレイを狙った帯域にだけピンポイントに足していく方が手軽だ、楽だという場面ではFXEQが非常に便利で、一旦全体にリバーブ、ディレイをかけてからミックスに対して問題を起こしている部分だけを抑え込んでなじませる方が気が楽であればAuroraやCascadiaが適しているでしょう。

「最初に選ぶリバーブ、ディレイ」という観点で考えるとAuroraやCascadiaの方がとっつきやすいと個人的には感じますし、ある程度慣れている人がミックスの中のちょっとしたスパイスとして飛び道具的に使いたい場合はFXEQの方が自分の中にあるアイデアに応えてくれると思います。