簡単ボーカルプロセッサー比較【ミックスマスタリング学園】

ボーカル/ダイアログ用に新しくCatalystシリーズのVelvetがリリースされましたが、iZotopeには他にも近い用途のツールとしてNectar 4 Elements、VEAがあります。
それぞれの特徴を解説する前に、ボーカルをミックスする上で達成したいゴールについて5つの要素を挙げてみます。
1.トーン
2.ダイナミクス
3.ノイズ
4.シビランス
5.響き
トーンは周波数特性に関わるもので、EQやそれに類するツールを使って解決するのが一般的です。
ダイナミクスは音量に関わるもので、コンプレッサーやそれに類するツールを使って解決していきます。
ボーカルテイクに含まれるノイズにはいくつかの種類があり、代表的なものにリップノイズやバックグラウンドノイズがあります。
シビランスはSの子音、サ行に代表されるような耳障りな歯擦音です。ミックスの中で飛び抜けてきがちなので、適宜ディエッサー等で取り除いていきます。
基本的にボーカルはデッドな環境で録音し、響きはミックスの中でリバーブやディレイで足していくことになります。
さて、ツールの話に戻りましょう。Velvet、Nectar 4 Elements、VEAはいずれもボーカルのミックスに役立ちますが、役立つポイント、目的が異なります。
Velvetの場合
Velvetはトーン、ノイズ、シビランスに特化しています。Tonalのセクションでボーカルを文脈に応じて動的に最適なトーナルバランスに近づけてくれます。そして、その過程はスペクトラム上で可視化されるためなにが起きているかを視覚的に把握することができます。
リップノイズは従来であればRXのMouth De-clickモジュールを使って取り除くことが一般的でしたが、VelvetのDe-clickセクションを使えばRXが無くてもリアルタイムでリップノイズを除去することができます。Velvetではリップノイズを除去できますがバックグラウンドノイズや部屋鳴りに対処することはできません。
VelvetのSibilanceセクションはシビランス除去に特化しています。まずVelvetに入ってきた信号はシビランスとその他の成分に分離されるため、シビランスだけを狙い撃ちで削ることができるようになっています。更に、Learnボタンを使うことでシビランスのうちどの成分を削るのが効果的かをVelvet側に提案してもらうことができます。
どのセクションも処理の中身がそこまでブラックボックス化されているわけでもないため、初心者の方だけなくプロの方でも比較的安心して使うことができます。
Nectar 4 Elements
Nectar 4 Elementsはトーン、ダイナミクス、響きを整えるタスクをツール任せにすることができる簡単ツールです。
いずれの要素もノブを回すだけ、X-Yパッドを操作するだけで調整することができるため細かい用語を知らない初心者の方でも簡単に操作することができます。
プロの方であればパラメータが少ない(というか無い)ことが逆に触りづらい場面も出てくると思いますが、そういった方のために上位版のNectar 4 StandardやNectar 4 Advancedが用意されているため、ボーカルミックスを突き詰めていくための入口としてもNectar 4 Elementsは適していると言えます。
VEA
VEAは若干毛色が違い、どちらかというとダイアログに適したツールですがボーカルにも使うことができる、くらいの位置づけです。
3つのノブを回すだけでバックグラウンドノイズを取り除きつつトーンとダイナミクスを整えて聞きやすいボーカルテイクにすることができます。バックグラウンドノイズは減らすことができますがリップノイズやシビランスに対しては作用しません。
ノブを回すことで内部的にどのような処理が行われているかはブラックボックス化されているため、Nectar 4 Elements同様初心者の方でも安心して使うことができますし、プロの方でも考えることを減らしたい場面ではVEAが役立つケースがあると思われます。
上記の内容を表にまとめるとこんな感じです。
用途に応じたツールを選んで、快適なボーカルミックスを楽しんで下さい。