Ozone 11のVintage Compressorをドラムバスに使う【ミックスマスタリング学園】

マスタリングツールとしておなじみのOzoneですが、ミキシングの中でも当然のように役立ちます。以前Neutron 5のコンプレッサーをドラムバスに使う例をご紹介しましたが、OzoneのVintage Compressorでもドラム全体の結びつきを強めることができます。
まずはドラムバスにOzone 11 Vintage Compressorをインサートしてみましょう。もしこの時点でコンプレッションがかかり始めてしまう場合は一旦Thresholdを上げてコンプレッションがかからない状態から始めましょう。
Vintage Compressorをインサートした時点でリダクションが起きている様子
入力がクリップして表示が赤くなっている場合はVintage Compressorに入力されている信号のレベルが高すぎるため、入力ゲインを下げてください。
入力が大きくてクリップしている場合は
入力を下げてクリップしないように
音量の自動補正がオンになっていると調整が難しいので、音作りを始める前にオフにしておきましょう。これがオンになっているコンプレッションがかかった分だけドラムの音量が持ち上がり、結果的にドラムを引っ込めたり落ち着かせる効果の判断が難しくなります。
音量の自動補正は切っておくと後々判断がしやすい
Vintage Compressorには3つのモードがありますが、今回はドラムのトランジェントを捉えたいので反応が最も速いSharpモードを選びます。
コンプレッションのモードを今回はSharpに
Sharpモードにしたら細かいことはさておきとりあえずThresholdを下げてみましょう。ピークに引っかかるところからコンプレッションがかかり始めるので、ドラムがバンドの他の楽器と足並みが揃うところまで下げていきます。
Thresholdを下げるとコンプレッションがかかり始める
おそらくこのままだとキックがポンピングを起こしていたり、スネアが十分に押さえつけられていないと思われます。ここからはRatio、Attack、Release、フィルター等を駆使してちょうどいいコンプレッションになるように調整します。
ここから調整していくパラメータ類
スネアが強く飛び出してしまっている場合はRatioを上げてみましょう。Ratioを上げればその分飛び出している部分が強く叩かれるようになります。Ratioを上げてコンプレッションのかかりが汚くなったらThresholdを緩めて調整してください。
Ratioを上げてもトランジェントが突き抜けてくる感じが緩和されない場合はAttackを下げてみましょう。逆にスネアが強く抑え込まれすぎたと感じる場合はAttackを上げることで緩和されます。Releaseが大きいと抑え込まれた感じの強い音になりますが、下げるとコンプレッションからすぐに復帰するので開けた音になります。
ThresholdとRatio、Attack、Releaseを行き来しながら調整を繰り返していけば、ドラムの突き抜けた部分だけが上手く抑えられてアンサンブル全体と馴染んだ音にたどり着けると思います。
調整をしていてどうしても不自然なコンプレッションがかかってしまうと感じる場合は、Deltaボタンを押すことで元の信号とコンプレッションがかかった後の信号の差分を聴くことができます。つまり、現在Vintage Compressorがどのような影響を及ぼしているのかを知ることができます。
Deltaを有効にすると処理前後の差分だけをチェックできる
もしキックのインパクトが失われてしまう場合やドラム全体のポンピングが気になる場合は、サイドチェインフィルターを使うことで解決できる場合があります。
サイドチェインフィルターはここで調整。
Vintage Compressorの検出回路はフィルターのかかった後の信号を聴いているため、サイドチェインフィルターのカットオフ周波数を上げると「よりキックの成分が少ない信号」に反応してコンプレッションがかかるようになります。つまり、キックに反応しづらくなります。検出回路が聴いている信号を確認したい場合はサイドチェインフィルターのSボタンを押せばOKです。
サイドチェインフィルターのソロボタンを押すと検出回路が聴いている信号を確認できる
キックとスネアそれぞれへのコンプレッサーの反応の度合いをサイドチェインフィルターで調節することで、バスコンプレッションをより柔軟にかけることができます。
最終的にドラムの音色への影響がどうしても思った感じにならない場合はSharpだけでなく、BalancedやSmoothモードを試すことで解決する場合もあります。
このように、ドラムバスにOzone 11 Vintage Compressorを使うことでアンサンブルの中でのドラムの立ち位置や距離感、質感を手早く整えることができます。