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ボーカルミックスの7つの要素【ミックスマスタリング学園#2】

2023.02.03


ボーカルは間違いなく楽曲において最も重要なパートを担いますが、主役たらしめるためにどのような処理が必要となるのかを考えてみましょう。
 

ノイズ除去

リップノイズや空調のノイズ、部屋鳴りなどはボーカルの聞き心地に大きな悪影響を及ぼします。これらのせいでミックスが上手く行かなかったり時間がかかってしまったりするため、事前にRXを使って対策してあげましょう。

 

ピッチ、タイミング補正

ベストなボーカルテイクを録ろうと思っても、スタジオのセッション時間の制約などでそれが達成出来ないかもしれません。そうなると、ミックスを始める前にボーカルをエディットしてあげる必要があります。

Nectar 3 PlusのPitchモジュールを使えば楽曲のスケールに沿ってボーカルのピッチを修正することが出来ますし、Nectar 3 Plusに付属しているMelodyne 5 Essentialを使えばより詳細なエディットも可能です。

ここまでくればミックスの下準備は完了です。下準備とは言っても、ここに手間暇をかけたか否かで最終的なボーカルのクオリティは大きく変わります。
 

ベーシックな音量制御

いよいよミックスです。まずは音量から確認します。ボーカルの抑揚がバックのトラックに対して大きすぎないかを確認します。オケに対して明らかに沈んでしまっている部分は持ち上げて、逆に飛び出てしまっている部分は下げます。オートメーションを使ってもいいですが、NectarのAuto Level Modeを使えば自動で音量調整を行うことも出来ます。

 

不要な成分のカットEQ

声は一人ひとり異なりますが、特定の音程や子音において特定の帯域が強く共鳴し、それが時として不快に感じられたりミックスの中の他の要素を埋もれさせてしまうことがあります。そういった不要な成分をEQでカットすることでミックス全体が聴きやすくなります。

サ行はその中でも問題が起きやすく、専用の対処が必要になるケースが多いです。NectarのDe-esserモジュールを使えば、Sの子音に反応して高域を減衰させることが出来ます。減衰させるというと不安になる方もいるかもしれませんが、上手く設定することが出来ればオケと合わせた時に自然な音になります。

 

音色を整えるEQ

声の問題点を解決した後に、全体的な声の音色、トーナルバランスをEQで整えることでボーカルのパッと聴きの印象を整えてあげましょう。使うツール自体は不要な成分をカットするEQと同じものですが、用途や使う際の意識が異なります。
ダイナミックレンジを楽曲に合わせる
ここまでの処理を終えた後にミックスの中でボーカルの存在感が一定でない場合は、コンプレッサーの出番かもしれません。コンプレッサーでボーカルの大きな部分と小さな部分の音量差(ダイナミックレンジ)を狭めてあげることによって、楽曲の中でのボーカルの存在感を安定させることが出来ます。

 

響きを楽曲に合わせる

ダイナミクスを楽曲に合わせることが出来たら、ボーカルが存在する空間も楽曲と合わせてあげましょう。NectarのReverbやDelayモジュールを使えば、ボーカルがオケと同じ場所で歌っているようなミックスに仕上げることが出来ます。

 

とはいえ、ここまでのプロセスを全て自分で判断しながら調整するのは難しい、面倒くさいと感じる方もいるかもしません。そういった方にはNectarのVocal Assistantがオススメです。
 

アシスタントの力を借りる

NectarのVocal Assistantを使えば、こうした一連のミックスの流れをAIが判断し、自動的にトラックプリセットを提案してくれます。自分であたりを付ける必要が無いので、ミックスが得意な方にとっては時短になりますし、ミックスが苦手な方にとっては心強い基準になるでしょう。

Vocal Assistantは事前にボーカルの仕上がりのイメージを指定することが出来るため、それぞれのモジュールの詳細な使い方を楽曲に合わせて自分で考える必要がありません。アシスタントの提案が自分のイメージに近ければそのまま使っても大丈夫ですし、自分だったらこうしたいという意見がある場合は自由にパラメータを調整して下さい。

それぞれのモジュールの詳細なパラメータを自分で調整するのはハードルが高く感じる場合はNectar Elementsを使うことでより気軽にボーカルミックスを楽しむことが出来ます。

 

プラスアルファのアイデア

勿論これらはボーカルをミックスする上でケアしたいポイントというだけなので、ここから更に楽曲を魅力的に聴かせるためのアイデアを足していって下さい。コーラス等のモジュレーションで音に動きを加えてもいいですし、アナログレコードのようなローファイな音に加工しても面白いかもしれません。NectarのModulationモジュールや、フリープラグインのVinyl 2を使えばこうした音作りも柔軟に行うことが出来ます。

 

アイデアの数だけミックスの可能性は広がっていきますが、アイデアを載せるための土台づくりにアシスタント機能を役立ててみて下さい。
 

この記事を書いた人
iZotopeアーティスト
青木 征洋
作編曲家/ギタリスト/エンジニア
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