チュートリアル

ミックスでゴールを見失ったら【ミックスマスタリング学園#24】

2024.03.11

ミックスは楽しい作業ですが、ずっと集中して続けていると正しい判断が出来なくなってしまうことがよくあります。今自分が行っているミックスを聞き慣れ過ぎてしまって、バランスが崩れていることに気づけなくなるのです。

本記事では、ミックス中にゴールを見失ってしまった時にそれに気づくための方法をいくつかご紹介します。

トーナルバランスを知る

よくあるのが、低域過多または高域過多の状態でしょう。一度陥ってしまうと中々気づくのが難しいですが、Tonal Balance Controlを使うことで特定ジャンルの典型的なトーナルバランスと比較して現在のミックスのどこが出っ張っていてどこが引っ込んでいるのかを視覚的に捉えることができます。

マスターにTonal Balance Controlをインサートしたら、現在ミックスしている楽曲のジャンルに最も近いものを選びます。すると、4つの長方形の領域の形が変わりそのジャンルが一般的にどのようなトーナルバランスを持っているかを教えてくれます。

ここで白線で描画されているのが現在の自分のミックスのトーナルバランスです。どこか特定の帯域に情報が偏っていれば直ぐに分かります。

Broad表示だと大雑把過ぎる場合はFine表示に切り替えるとより細かいカーブを見ることが出来ます。

左上に表示されているレーンとボールはクレストファクターのメーターです。いきなり難解そうな横文字が出てきましたがここではその定義を知る必要は無くて、ボールが左に動いたらキックがベースよりも強くて右に動いたらベースがキックよりも強いという大雑把な捉え方で大丈夫です。

ここで重要なのはミックスの現状が把握出来ることです。Tonal Balance Controlの曲線を狙ったカーブに近づけることやクレストファクターの表示を中心に近づける必要は無く、ただ現状が「そういうものである」ということを理解することが作業を続ける上で大きな手がかりになるでしょう。

本来は他の人の耳で聴いてもらって客観的な意見を言ってもらうのが最も効果的ですが、Tonal Balance Controlはそうした「第三者の耳」として使うことが出来る便利なツールです。

アシスタントに聞いてみる

Tonal Balance Controlを見てもじゃあここからどうすればよいのか判断が難しい場合はOzoneのMaster Assistantが便利で、現在のミックスに対しOzoneがどのような処理を施したのかを詳しく知ることが出来ます。

マスターにOzoneをインサートしてアシスタントボタンを押したら、楽曲の中で一番盛り上がっているところを10秒ほど再生して下さい。

アシスタントによる解析が終わるとMaster Assistand Viewに遷移します。この画面の左側のTargetsの中から最も近いと思われるジャンルを選んだら、Module Viewを覗いてみましょう。

Module Viewでは現在のミックスに対して特定のジャンル感の一般的なマスターに近づけるためにどのような処理をしたのか詳しく知ることが出来ます。特に注目すべきはEqualizer、Stabilizer、Clarity、Impactモジュールです。


▲Equalizerモジュール


▲Stabilizerモジュール


▲Clarityモジュール

Equalizer、Stabilizer,Clarityでは、Ozoneがどのようにトーナルバランスに影響を与えたかを数値で把握することが出来、バイパスした状態と聴き比べることで現在のミックスのどの部分が問題を生じさせているか、偏りがあるかを直ぐに知ることができます。

また、Impactモジュールを見ると現状のキックやスネアのトランジェントが鋭すぎないか、鈍すぎないかの目安を得ることが出来ます。


▲Impactモジュール

いずれもアシスタントの指示に従うのが正解というわけではありませんが、自分のアイデアだけで進めてきたミックスのどこにどう手を入れればどのように変わりうるかという可能性が提示されることで、それまで客観性を失ってしまっていた自分に気づくことができます。

リファレンスを頼る

リファレンスミックスも、自分の感覚を正すためにとても役に立ちます。リファレンスとは、自分の作業の基準を作るために参照する(リファレンスする)楽曲のことです。自分が「この曲のサウンドが好き!」という楽曲を選ぶのもよいですが、自分が最も聞き慣れていてバランスが良いと感じる音源を常に使い回すととても大きな効果を発揮します。

従来であれば、作業を始める前や作業の途中にリファレンスを手元のプログラムと聴き比べて、今自分が作っているミックスがどのように偏っているかを自身の耳で判断する必要がありましたが、OzoneとAudiolensを使うことでリファレンスをより手軽に役立てられるようになります。

Audiolensアプリを起動したら、PC/Mac上で自分がリファレンスに使いたい楽曲を再生しCaptureボタンをクリックします。

しばらく再生した後にストップして名前をつけて保存すると、Targets欄に新しいターゲットとして登録することができます。

このターゲットはOzoneのMaster Assistantの中でもターゲットとして使うことができます。

従来であればミックスの最中に客観視が難しくなった時、長時間休憩をとったり誰か他の人の意見を求める必要がありましたが、OzoneやTonal Balance Control、Audiolensといったツールを駆使することで第三者的な視点を得ることができます。ミックスの中でゴールを見失っている自分に気づいた時はぜひ試してみて下さい。