チュートリアル

クリエイティブなディストーションプラグインTrashを使ってみよう【ミックスマスタリング学園#27】

2024.04.22

装いも新たに復活したディストーションプラグインTrashを使ってみましょう。

Trashは、無料版のTrash Liteで出来ることに加えて

  • CONVOLUTIONによる響きやキャラクターの付与
  • フィルターによる音作り
  • エンベロープによる歪みの時間変化
  • マルチバンド処理

が出来ます。

Trashの心臓部である、音を歪ませるTRASHモジュールについてはTrash Liteのブログ記事をご覧ください。

無料のディストーションプラグインTrash Liteを使ってみよう【ミックスマスタリング学園#26】

Trashでどんな歪みが作れるかを何となく把握するために、まずはプリセットをいくつか切り替えてみてください。

どのプリセットを選ぶか迷った時はサイコロのボタンをクリックするとプリセットをランダムに切り替えてくれるので便利です。このあたりはTrash Liteと変わりませんね。

何となくいい感じの歪みが見つかったらTRASHモジュールで歪みに手を加えてみて下さい。歪みが決まったらCONVOLVEモジュールで響きやキャラクターを加えてみましょう。

CONVOLVEのコアはなんといってもインパルスレスポンス(以下IR)の選択です。ブレンドパッド上では4つのIRが読み込まれていますが、これを他のものに切り替えることで音がガラッと変わります。

部屋の響きに限らず、ギターアンプのキャビネットの音等様々なIRが用意されていますので、色々切り替えて好きなものを探してみて下さい。

IRはDynamicマイク、Condenserマイク、Ribbonマイクの3種類のマイクで収録されており、どれを選ぶかによって音色が変わります。Dynamicが最もナローレンジでCondenserだとフラットな印象になり、Ribbonだとウォームでナチュラルな音になるでしょう。

またもし手元に使いたいIR(リバーブでもキャビネットでも)があれば、Customのカテゴリで+ボタンをクリックすればTrashに読み込んで使うことが出来ます。

IRが決まったら次の画像の赤い四角で囲まれたボールをマウスでドラッグして、キャラクターの混ざり具合を調節してみましょう。TRASHモジュールについてもそうですが、ここでは不正解はありません。ただ心の赴くままに好きな音を目指せばそれが正解です。

IR選びとバランスが決まったら、右側のMixノブでWet音とDry音のバランスを取ってみてください。このあたりで何となくCONCOLVEがある意味リバーブの一種ということが分かると思います。

Widthノブでステレオ幅を調節することができ、モノのソースであってもStereoizeノブを上げれば左右に広げることが出来ます。

Trashではこれらの音作りがなされた信号に対して面白いローパスフィルターをかけることができます。

  • Frequency: カットオフ周波数
  • Scream: 自己発振
  • Heat: フィルター処理にかけるディストーションのゲイン

Frequencyでローパスフィルターのカットオフ周波数を設定し、Screamでその周波数付近のレゾナンスの度合いを調整します。上げていくと自己発振を起こし、キーンという耳に刺さる叫び声のような音を作ることができます。Heatはフィルターの入力ゲインです。上げていくとサチュレートしていき、Trashとはキャラクターの異なる歪みを加えることができます。

また、次の3つのパラメータにモジュレーションをかけることができます。

  • Drive
  • フィルターのカットオフ周波数
  • TRASHのブレンドコントロールのポイント

青緑で表示されるこれらのコントロールをマウスでドラッグすることで、それぞれのパラメータが最大でどこまで動くかを設定できます。

それぞれ設定したポイントを100%した時、ENVELOPEセクションの

  • Modulationで設定されたパーセンテージのところまで、
  • 入力レベルが上がった時にAttackで設定された時間をかけてパラメータが変化し、
  • 入力レベルが下がった時にReleaseで設定された時間をかけて本来のパラメータに戻ります。

これにより、歪ませ方やフィルターのかかり具合を時間変化させることができます。

Trashではここまでの音作りを最大3バンドに分けて行うことが出来ます。GUI上部のハンドルを左右に動かすと

このように3つのバンドに対し別々のパラメータを設定することが出来、上下のハンドルをドラッグするとそれぞれの帯域のレベルを調節することが出来ます。

Trash 1.2.0で追加された新機能であるOversampleスイッチを有効にすると4倍のオーバーサンプリングが行われ、過度に歪ませた場合でもエイリアシングノイズ(折り返し雑音)を抑えることができます。

その他のインプット/アウトプットゲインやオートゲイン、Limiter、グローバルMixスライダーについてはTrash Liteと同じです。

Trash Liteの時点で非常にクリエイティブに使うことが出来ますが、製品版のTrashにアップグレードすると終わりのないディストーションデザインの深淵があなたを待っています。