チュートリアル

リバーブの味変【ミックスマスタリング学園#30】

2024.07.22

マーケットには無数のリバーブの選択肢が存在していてそのどれもが特徴的なサウンドを持っていますが、それら全てを手に入れて使い分けることはお財布事情的にも中々難しいものがあります。

そこで、既に持っているリバーブに更にエフェクトをかけることでリバーブの風合い、面構えを変えることを考えてみましょう。NeoverbとNeutron 4を例に説明していきます。

インサートVSセンド

具体的な解説に入る前に、リバーブのかけ方について簡単に触れておきたいと思います。リバーブをかけたいトラックに直接リバーブをかけるのがインサートで、リバーブをかけたいトラックから信号を別のトラックに分岐させて、分岐先でリバーブをかけるのがセンドだと思ってください。

この2つにはそれぞれメリットとデメリットがあります。インサートのメリットはなんといっても直感的でわかりやすいことです。多くの人は初めてリバーブをかけた時このやり方をしたのではないでしょうか。一方で、同じようなリバーブを沢山のソースにかけたい場合にトラック数が増えた分だけCPU負荷が上昇していくという問題があったり、全てのトラックに同じリバーブを適用したい場合にパラメータを一致させるのに手間があるといった問題が生じます。

これに対しセンドでリバーブをかけるとなると信号を分岐させるという一手間が加わるため若干直感的ではなくなります。特に、初心者の方にとっては中身が空のAUX、バスという概念、有用性を理解するのに時間がかかるかもしれません。ただ、センドでリバーブをかけることによって沢山のトラックにリバーブ1つ分の処理負荷でリバーブをかけることができたり、複数のトラックに対し同じパラメータのリバーブを異なる深さでかけることができたりします。そしてこれが本記事にも関わる重要な部分なのですが、センドでかけるリバーブはリバーブだけの(Wet 100%の)信号を用いるため、リバーブ成分のみに対する音作りが可能なのです。

このように、インサートとセンドにはそれぞれのメリットとデメリットがありどちらが優れているというものではないため、状況に応じて適したかけかたを選ぶ必要があります。

EQ

それでは本題に参りましょう。リバーブに対する最もポピュラーな処理はEQと言っても過言ではないでしょう。Neoverb自体にもリバーブはついていますが、その前後にNeutron Equalizerを使うことでよりストレスなくリバーブのトーンを調整することができます。

リバーブの音だけにEQのをかけたいので、ここではNeoverbをインサートではなくセンドで使うようにしてください。リバーブをどうかければいいか悩んだときは、NeoverbのReverb AssistantにEQのポイントを提案してもらうこともおすすめです。

 

Reverb Assistantを使うとEarly ReflectionとTailのバランスだけでなくリバーブに対するEQの提案を受けることができます。このポイントを参考にしてNeutronでリバーブの微調整すれば、狭い画面でEQを操作するストレスを感じずに済みます。


NeoverbのEQよりもNeutronのEQの方が画面が広くて調整しやすい

Compressor

これもまたポピュラーで、リバーブのみにコンプレッサーをかけることでアレンジが混み合っている部分ではリバーブを抑えてクリアさを優先し、アレンジに隙間が生まれた時にリバーブで空間を埋めるといった手法があります。味変というよりはミックスの中でのバランス調整としての意味合いが強い手法です。

StratusやSymphonyであればコンプレッサーを別途インサートしなくてもTail Suppressというという機能を使えばリバーブ成分が膨れ上がった時だけ抑え込むことができて便利です。


右側のインジケーターでゲインリダクション量が分かる

Transient Shaper

リバーブに使えるのはEQやコンプレッサーだけではありません。Transient Shaperを使うことを考えてみましょう。例えばスネアに対してリバーブをかける時、Transient部分に反応したリバーブの粒子が悪目立ちしてしまうことがよくあります。

そこでリバーブのみにTransient ShaperをかけてAttackを抑えてSustainを上げることで、響きを際立たせて最小限のリバーブで済ませることができます。

ただリバーブへのセンド量を上げていくのと違って、響に求める量感や存在感がコントロールできるので選択肢として持っておくと意外と役に立つ方法です。

 

Exciter

もっと過激にリバーブの音色を変化させたい場合Exciterも有効な手段です。リバーブに対しNeutron Exciterをインサートして歪ませていくとリバーブがより主張するようになります。この時リバーブの音色そのものが変わっているので、リバーブの音量を上げるのとはまた異なる効果が得られます。

Neutron 4のExciterにはTrashモードを含めた様々なアルゴリズムが実装されているので、ソースのキャラクターに応じて柔軟な歪みを加えることができるでしょう。