How to

RXを既に持っているユーザーもDialogue Matchが必要である理由とは?

2020.03.24

iZotopeのRXは、業界トップのオーディオ・リペア・ツール/ポストプロダクション・ソフトウェアとして10年以上も称賛されてきました。過去の受賞歴なども踏まえて、こうお考えの方もいるでしょう。

「現在市販されている最強のポストプロダクション・ソフトウェアを既に持っているなら、Dialogue Matchは必要ないのではないか?」

これはもっともな質問です。今までのワークフローを改善しないような製品には購買意欲も湧いてこないでしょう。実のところ、Dialogue MatchはこれまでのiZotope製品とは異なり、RXほど革新的な製品ではありません。この記事では、RXとDialogue Matchそれぞれの使い道を明らかにすると同時に、なぜ両方が皆さんの「道具箱」に必要なのかを解説していきます。

ダイアログ編集のパラダイムシフト 
「必要は発明の母」という諺がありますが、Dialogue Matchの開発にも間違いなく当てはまります。Dialogue Matchは、ポストプロダクションにおけるダイアログ編集へのアプローチを考え直すという取り組みから開発されました。そして私たちは、Exponential Audio設立者でリバーブのエクスパートであるマイケル・カーンズ氏と共同で、ひとつのダイアログからリバーブ、EQ、アンビエンスのデータをプロファイリングし、それを直接別のダイアログに適用できる製品を開発しました。その結果、皆さんは今、ひとつのオーディオ・ファイルを、他のオーディオ・ファイルと同じ空間、同じ物理条件で録音されたようなサウンドに変えることができるようになったのです。

なぜそれが重要なのでしょうか?ダイアログのサウンドに一貫性を持たせることは、オーディエンスの気を散らせないためにも必要不可欠です。Dialogue Matchが開発される前まで、様々な環境や機材で録音された数えきれないほどのオーディオ・ファイルを違和感のない自然なサウンドにまとめ上げることは、ポストプロダクションの現場にとって悪夢のような作業でした。緻密なイコライゼーション、リバーブ・デザイン、アンビエンス・マッチングといった作業を経て、ようやくオリジナルの雰囲気に近づけられる程度だったのです。

そこでDialogue Matchの登場です。業界初のリバーブ・マッチング技術、iZotopeの機械学習によるEQ/リバーブ・マッチング・アルゴリズム、そしてExponential Audioの非の打ちどころのない自然なリバーブ・エンジンが搭載されたDialogue Matchは、ひとつのダイアログにある空間音の複製し、それを即座に別のダイアログに適用することを可能にします。したがって、これまで膨大な時間を必要としていたダイアログ編集の作業を、数分で(場合によっては数秒で!)終わらせることができるのです。しかも、これまで以上に正確に。まとめるとDialogue Matchを使えば、より簡単に、より早く、より正確なダイアログ編集を行えます。

2つのツール、2つの役割 
Dialogue MatchとRXの大きな違いは、それぞれの目的にあります。RXがポストプロダクションにおける広範囲のアプローチを目的とする、オーディオ・リペアや音質改善のためのモジュールを提供するのにたいして、Dialogue Matchは具体的にダイアログ編集を目的とする、簡素化された全く新しいワークフローを提案するために設計されています。ダイアログのサウンドに一貫性を持たせるには、RXと同じくらい強力で柔軟性のある新しい編集ツールが必要であることに私たちは気付きました。そこで私たちは、RXにオーディオ・リペア処理を任せることにして、オーディオ・ポストプロダクションにおけるダイアログ編集に費やす時間を短縮できるようDialogue Matchを開発しました。

確かに、RXの様々なオーディオの問題に対応できる能力には大きなメリットがありますが、特定の処理にはそれに焦点を合わせたツールセットが必要になります。Dialogue Match開発の意図はそこにありました。私たちが徹底的な市場調査を行い、プロフェッショナルのダイアログ・エディターたちに直接お話を聞く中で明らかになったのは、ポストプロダクションで最も時間のかかる複数ダイアログのマッチング編集を効率化するツールが業界で必要とされていたことでした。Dialogue Matchはポストプロダクションのひとつにフォーカスしたツールではありますが、その役割を十二分に発揮するのはもちろん、今までのうんざりするほど時間のかかる編集プロセスを短縮できるのです。

RXを使うのはどんな時か?
俳優は力強くエモーショナルな演技をすることができます。それは監督や演出家を喜ばせることかと思いますが、環境ノイズや電気的干渉などの問題を持つプロダクション・オーディオ(現場で録音された音声など)を見つけてしまったポストプロダクションのエンジニアにとっては悩みの種になることもあります。そして、ここがRXの出番となります。スタンドアローンの RX Audio Editorには、この世で最も強力なオーディオ・リペア・ツールが装備されていて、ダメージの大きいオーディオ・ファイルをゴミ箱から救うことも可能にします。

例えばダイアログ編集の際、最も便利なRXモジュールのひとつがDialogue Isolateです。以下のサンプルを聴いてみてください。「Dialogue Isolate Before」で聞こえていた背景のノイズが、「Dialogue Isolate After」では除去され、話し声が聞き取りやすくなっています。

撮影現場でよくある問題をもうひとつ。それは、俳優が付けられたラベリアマイク(ピンマイク)が拾ってしまった衣擦れ音で、音声に干渉する問題が発生します。しかしRXには、この問題を解決するDe-rustleモジュールがあります。De-rustleの活躍を以下のサンプルでお聴きください。

Dialogue Matchを使うのはどんな時か?
ここまでお話してきたように、RXはダイアログが持つ問題を取り除き、最終的なミキシングの前にクリーンなオーディオ・ファイルにすることができる素晴らしいツールです。高音質ダイアログの準備ができたら、Dialogue Matchでシーン全体の音声を繋がりのあるサウンドにまとめましょう。これはオーディエンスをシーンに集中させるために必要不可欠なプロセスです。様々なケースでダイアログ・マッチングを可能にするDialogue Matchは最適なツールになります。

ラベリアマイクとブームマイクで収録したダイアログのマッチング
ラベリアマイクで録音したダイアログは、ブームマイクと比べてより明瞭なサウンドになることが多いですが、その場の臨場感に欠ける場合があります。こうしたケースでは、どんなに俳優が情熱的な演技をしたとしても、説得力のない音声になってしまいます。以下の動画は、Dialogue Matchを使用して、ブームマイクのアンビエンスをラベリアマイクで録音したダイアログに適用した例になります。ラベリアマイクの明瞭さを失うことなく、部屋の空気感が付加されたことに注意してお聴きください。

ADRとプロダクション・オーディオのマッチング
よくある音声収録の落とし穴は、ADR(アフレコと同義)で俳優がセリフの再録音を行う時にも発生します。ADRは音響的に調整されたレコーディング・スタジオで行われるため、スタジオで録音されたダイアログと撮影現場で録音されたプロダクション・オーディオの違いが目立ち、オーディエンスの気を散らせてしまう恐れがあります。しかし、これからは恐れる必要はありません。Dialogue Matchを使用すれば、ADR素材に撮影現場の空気感を付加することができます。以下のオーディオ・サンプルをクリックして、ご自身の耳で確認してみてください。

おわりに 
RXとDialogue Matchにはそれぞれ特有の役割があり、両方を使用すれば相乗効果でより便利で強力なツールになります。ここまでお読みいただいた通り、RXでダイアログの「汚れ」を落とし磨きをかけた後、Dialogue Matchでダイアログをシーンにフィットさせることができます。

ポストプロダクションでダイアログを扱っている方なら誰でも、RXとDialogue Match両方から得られるものは大きいでしょう。これら2つの革新的なツールがあれば、どんなポストプロダクション作業も世界記録的な短時間で終わらせることができます。